皆さんは、「アセクシュアル」といた言葉をご存じでしょうか?ここ数年でLGBTという言葉が広く知られるようになった背景もあり、さまざまなセクシャルが存在することが一般常識になりつつあります。
今回はアセクシャルについて、その特徴などをご紹介します。
アセクシャルの特徴を知らずに交流すると、無意識に人を傷つけてしまうこともあるので、ぜひこの機会にアセクシャルについて知識を深めてみてください。
・他者に性的な興奮を抱かないし、他者に対して恋愛感情も持たない
=「エロ」は無いし「スキ」も無い
アセクシャルとは、他人に対して性的欲求を抱かないセクシャリティのことで、日本では無性愛者とも呼ばれています。
近年はLGBTが一般的に知られていますが、これに加えてLGBTQIAなどの頭文字が増えている言葉も誕生しています。LGBTQIAのAはアセクシャルの頭文字であり、世界最大級のアセクシャル・コミュニティーAVENでは、アセクシャルを「恋愛感情の有無に関わらず、他者への性的欲求を経験しない人」、と定義されている言葉です。
一口にアセクシャルと言っても、大きく分けると2種類に分けることができます。
1つ目が他者に対して恋愛感情はあっても性的欲求を抱かないロマンティック・アセクシャル、2つ目は恋愛感情も性的欲求も抱かないアロマンティック・アセクシャルです。
日本においては、アセクシャルと言われるとアロマンティック・アセクシャルのことを指す場合が多いです。より詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
現在では一般的に性行為を含めた恋愛関係が普通だと捉えられていますが、これを理解できないと感じていたり、他者の恋バナに興味を感じられなかったりしている方は、今回ご紹介するアセクシャルのことを知ると、少し気持ちが楽になるでしょう。
たぶん私達みたいな「友情婚」はみんなが憧れてる結婚の形じゃないと思うけど、私と彼にとっては1番しっくりきて、理想とする結婚の形だった。
— なかば (@nakaba_konkatsu) January 14, 2024
手も繋いでないしキスもしてない、たぶんセックスもしない。そもそもお互いに性欲の対象ではない、けど大事な相手。ずっとこれになりたかった。
Williams Instituteというアメリカの性的指向とジェンダーアイデンティティを研究している機関が2019年に実施したアンケートによると、1504人のセクシャルマイノリティのうち、1.7%の19人がアセクシャルと回答しました。
また、アメリカの作家ジュリー・ソンドラ・デッカーによれば、人口の100人のうち1人はアセクシャルであると示唆しています。
さらに、日本でも調査は行われており、厚生労働省が2019年に大阪市で実施したアンケートによると、無作為に抽出した15000人の有効票であった4,294票のうち、アセクシャルだと回答した人は33人でした。
人口のごく一部に対する調査ではありましたが、この結果により日本でもアセクシャルに該当する人は一定数存在することが分かります。
アセクシャルは、現在では一般的に捉えられている多様なセクシャリティの1つであり、性欲自体を持たない人や、性行為に嫌悪感を抱く症状とも異なります。
別のケースでは、後天的に性的欲求を抱かなくなることもあるため、一概にどのような人がどのタイミングでアセクシャルになるのかということは断言することができません。
また、アセクシャルである人の割合の調査も頻繁に行われているものではないため、割合の増減傾向について判断する材料が少ないことが現状です。
アセクシャルと似ている、もしくは類似しているセクシャリティにはいくつか種類があります。
まず、アロマンティックは性的欲求の有無とは関係無しに、他者に対して恋愛感情を抱かないセクシャリティです。アセクシャルの場合は恋愛感情を抱かないことはありますが、性的欲求が無い点がアロマンティックとは異なっています。
リスロマンティックは、恋愛感情があっても相手から恋愛感情を向けられることを望まない場合のことで、アポロマンティックとも呼ばれています。
また、クワロマンティックは恋愛感情と友情がどのように違うのかが分からない場合のことです。
そして、パンロマンティックとは性的欲求ではなく恋愛感情の面で全ての性別の人に惹かれることであり、全恋愛とも呼ばれています。
このように、セクシャリティは細分化されているのです。恋愛対象や性的欲求の有無を今一度よく考えてみると、自分自身のセクシャルがマイノリティである可能性は決してゼロではないと言えるでしょう。
数字では1%程度しかいないので少ないと思われがちですが、個人的には自認していないアセクシャルは相当数いると考えています。
筆者はスキゾイドであり同じスキゾイドの人と交流することが多いのですが、スキゾイドにはアセクシャルやアロマンティックが非常に多いです(筆者はアロマンティック)。ですが、「自分はアセクシャルである」と自認している人は非常に少ないです。
また「スキゾイド」自体も自認していない人は多いです。現代社会は皆が"うっすらと"「スキゾイド的」「アセクシャル的」な価値観をもっているので、疑わしいと思う人には頻繁に出会います。
アセクシャルだとカミングアウトした時に周囲の人々から、他人への愛情がない、冷たい人である、と思われることは少なくありません。
実際にアセクシャルの方は交際経験が無い場合もあり、告白されて付き合い始めたけどなんとなく違和感を感じて別れた、というケースもあります。
また、恋愛系のコンテンツに共感するという感覚も少なく、世間には他人に対してそのような感情を持つ人がいるのか、という蚊帳の外からの目線で興味を持ったり、恋愛感情の存在に実感が湧かず、非現実的な感情のように思ったりすることもあります。
しかし、恋愛感情がないからといって、感情がない・愛がないというわけではありません。
皆さんは恋愛感情や性的欲求などの感情と、友人や家族に対する友情・愛情は別々に抱くでしょう。それと同様に、恋愛感情や性的欲求が無いからといって、友人や家族を愛する気持ちが無いというわけではありません。
アセクシャルの人に対して、人を好きにならないなんてロボットみたいだ、と無神経な言葉を投げかける人々も時々いますが、そのような発言は相手を傷つける可能性もあるので、控えましょう。
アセクシャルな人は、性行為が全くないとは限りません。
あるセラピストによる見解では、アセクシャルは非常に多面的なので、中にはパートナーとの性行為はオープンであるという人も存在しているそうです。
性行為を行うまでの精神的過程には、その行為自体に魅力を感じるか、性欲を抱けるか、興奮できるのか、などの多種多様な要素が関わってきます。
そのため、個々で違いはあっても、何かしらの要素・欲求を満たしている方はいると考えられています。その一方で、性行為自体が無くても親密な関係になれるとも考えられているのです。
世間的には、アセクシャルは恋愛感情を抱かないと考えている方も多いですが、仮にアセクシャルを恋愛対象から外してしまうと、特別な出会いを逃してしまうかもしれません。
アセクシャルは多くの場合、相手との強い絆と精神的な深いつながりを求めている傾向にあります。そのため、性的なコミュニケーションが無かったとしても、ロマンチックな関係を望んでいる人は多いのです。
例えば、相手が喜ぶ言葉を送ったり、共に充実したひと時を過ごしたりするだけでも、十分に親密な関係は築けます。
アセクシャルだからといって、結婚しないというわけではありません。アセクシャルを自認している人々の中でも、結婚願望のある人は存在しています。
結婚はしなくても良いと考えている人もいますが、家族のように自分を支えてくれる存在が欲しいという想いがある人もいるのです。近年では、書類上の公的な婚姻を行うことなく、パートナーとして共に暮らしている人々もいます。
また、結婚やパートナーシップを結んでいるからといって、一緒に暮らしたり一生を添い遂げたりする必要は無いなどと考えている人もいます。
結婚というものに対して、多様な価値観をもつことが世間一般的にも求められているため、結婚・パートナーの概念を今一度考え直す必要があるでしょう。
昨今は友情結婚専門の結婚相談所なども開設されており、ここでは恋愛感情や性行為の無い結婚を望む者同士が出会える場が提供されています。
アセクシャルが独身主義者だと勘違いされることも多いですが、決してそのようなわけではありません。当人の性的嗜好・恋愛的嗜好と結婚やパートナーシップを望むかどうかは、全くの別物と捉えておくことが重要です。
恋愛対象が異性かつ性行為を含む婚姻関係を望む人が、結婚・離婚を繰り返す可能性があるように、アセクシャルでも何度も結婚・離婚を繰り返している人はいます。
浮気をする人がいれば、異性・同性とパートナーシップを結ぶ人もおり、また結婚・パートナーに全く興味が無く、独りで生きていきたいと思っている人もいます。
このように、アセクシャルにも恋愛観や結婚観はさまざまあるのです。
しかしながら、多くの人にとっては恋愛感情や性的欲求は愛情に伴っているものであるため、アセクシャルであることを受け入れた上で、交際を続けられる人が少ないという実情があります。結論として、多くのアセクシャルにとって、結婚や恋愛は難しく、ストレスにしかならない可能性は高いと思っておいた方がよいです。
もしパートナーや好きな人がアセクシャルだった場合、交際をする上では知っておくと良いことがいくつかあります。
例えば、アセクシャルに限らずに言えることではありますが、性的指向は本人の意志によって決まっているものではないため、嗜好とは異なります。しかし、まだ世間には十分に浸透していないので、アセクシャル本人は誤解される危険性を恐れて、カミングアウトすることが難しくなっているのが現状です。
そのため、仮にアセクシャルであると打ち明けられた時、それは非常にあなたを信頼している証拠でもあるので、パートナーの性的指向とあなたは無関係であることを認識しておくことが重要です。
また、パートナーの性的指向はあくまでも個人的なものであるため、誰かから影響を受けているわけではないことを理解しておきましょう。そのため、自分に性的魅力がないから、というように思い込む必要はありません。そもそもアセクシャルの多くは、性行為への欲求などが少なかったり、あるいは一切なかったりするので、パートナーに限らず誰に対しても性的魅力を感じない傾向にあるのです。
それでも不安に感じることがあれば、セクシャリティの専門家に相談してみることをおすすめします。
アセクシャルのパートナー探しで重要なポイントは3つあります。
1つ目が出会いの目的で、どのような人を探しているのかを明確にしておくことが重要です。
例えば、結婚相手としてのパートナーが欲しいのか、結婚はしたくないけどパートナーが欲しいのか、とにかく一緒に過ごせる人が欲しいのか、などの目的の違いがあります。そのため、最初にどのようなパートナーが欲しいのかを決めておきましょう。
2つ目は、パートナー探しに対してどれくらいの本気度があるのかです。
カジュアルに気軽な出会いを探したいのか、将来を共に過ごすパートナーを探したいのかで、どれくらいのお金や時間をかけられるのかが変わってきます。事前にどのスタンスで探すのかを決めておくと、お金や時間を無駄にすることが無いでしょう。
そして3つ目は、出会うために必要な予算です。
1円も出す予定が無いのか、数千円なら許容範囲なのか、それとも数万円?数十万円まで出せるのか、などの違いが個々であるはずです。予算によって出会い方が大きく変わるため、予算の範囲は非常に重要なポイントになります。
また、アセクシャルのパートナー探しでは、注意したい点もあります。
例えば、合コンやマッチングアプリなどで出会うと、相手にアセクシャルを理解してもらえない場合が多いです。アセクシャルは知らない人の立場から考えると、その悩みについて理解することに時間がかかります。
仮にプロフィールにアセクシャルと記載していても、読まない人や分かったと言いつつも理解できていない人もいます。このような相手と出会ってしまうと、疲れてしまったり病んでしまったりするので、注意が必要です。
また、自分のセクシャルが変わるかも、と考えてパートナー探しを始めても、セクシャリティが変わることがなく病んでしまうこともあります。実際に自分のセクシャルを確かめるためにマッチングアプリなどで出会いを探しても、結局何も変わらず、虚無感を感じる場合もあるでしょう。
特に出会い系のアプリで探している場合、性的なアピールに直面するケースが多いため、精神的に非常に疲れてしまう可能性があります。
さらに、誰にも相談することができずに、苦しくなってしまうこともあります。
相談できる人が周囲に存在すれば良いですが、理解してくれる人がいない場合は精神的に追い詰められてしまうこともあるでしょう。そのような場合は、友情結婚相談所などでアドバイザーに相談してみることをおすすめします。
今回の記事では、アセクシャルの特徴についてご紹介しました。
アセクシャルの中でも人によって細かな指向は異なるので、全てを理解しようとするのは難しいかもしれません。
しかし、仮に今後アセクシャルの人と出会う機会があった際は、セクシャルに関する発言への配慮を心がけましょう。アセクシャルというセクシャリティを理解しようとする姿勢は、相手にとって安心感を与えるきっかけになるはずです。
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