2025年度の国民負担率は46.2%——あなたが100万円稼いだとき、その46万円超は税金と社会保険料として消えていく計算だ。1970年の国民負担率は24.3%だった。55年間で約22ポイント増加した。これは「じわじわと」ではなく、「着実に・確実に・止めどなく」上昇し続けてきた結果だ。
国民負担率とは「国民所得に占める税負担と社会保険料負担の合計」のことだ。わかりやすく言えば、あなたが稼いだお金のうち国と行政に持っていかれる割合だ。46%という数字は、あなたが10時間働いた場合、そのうち4時間37分は国のために働いていることを意味する。残り5時間23分だけが自分のためだ。
📊 1970年度:24.3%(高度経済成長期)
📊 1990年度:38.4%(バブル崩壊直前)
📊 2000年度:35.6%(デフレ期・一時的低下)
📊 2010年度:37.2%
📊 2020年度:47.9%(コロナ禍)
📊 2025年度:46.2%(現在)
📊 上昇幅:約22ポイント(55年間)=年平均+0.4ポイントずつ増加
「46%でもまだ半分以下では?」と思う人もいるだろう。しかし見落としてはいけない重要な点がある。国民負担率46.2%は国民所得ベースで算出されており、手取り収入に対する負担率で換算すると、実態はさらに重くなる。特に給与所得者の場合、各種の社会保険料・所得税・住民税・消費税を合算した実質的な負担割合は50%を超えるケースが珍しくない。
国民負担率の中身を正確に把握することが重要だ。46.2%の内訳は大きく「租税負担率」と「社会保険料負担率」に分かれる。
2025年度の国民負担率46.2%の内訳は、おおよそ「租税負担率:約28%台」+「社会保険料負担率:約18%台」だ。単純な税負担だけなら28%程度だが、社会保険料という「第二の税」を加えると46%を超える。
特に注目すべきは、この50年間で社会保険料負担率の上昇幅が租税負担率の上昇幅を大幅に上回っている点だ。消費税の引き上げは政治的に目立つが、実は社会保険料の膨張こそが国民負担率を押し上げた主因なのだ。
| 年収(会社員) | 所得税+住民税 | 社会保険料(本人分) | 合計負担額・負担率 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 約20〜25万円 | 約46〜48万円 | 約66〜73万円(約22〜24%) |
| 500万円 | 約50〜60万円 | 約77〜80万円 | 約127〜140万円(約25〜28%) |
| 700万円 | 約100〜120万円 | 約95〜100万円 | 約195〜220万円(約28〜31%) |
| 1,000万円 | 約200〜220万円 | 約130〜135万円 | 約330〜355万円(約33〜35%) |
※給与所得控除・各種控除適用後の概算。消費税支出は含まない。社会保険料は協会けんぽ東京都加入・40歳以上。
この表に消費税を加算してほしい。年収500万円の人が年間消費支出から支払う消費税(支出の10%)は、仮に手取り年間350万円を全額消費に回せば35万円だ。直接税・社会保険料に消費税を加算すると、年収500万円の会社員の実質負担率は手取りベースで40%超になる。「半分近く持っていかれる」という感覚は誇張ではなく、事実に近い。
さらに見落としてはならない数字がある。「潜在的国民負担率」だ。これは現在の国民負担率に「財政赤字(将来世代への先送り分)」を加算した指標で、2025年度で約55%台になると試算されている。
国が毎年30〜40兆円規模の赤字国債を発行し続けているということは、現世代が払いきれない社会保障費等を将来世代に先送りしていることを意味する。「現在の負担率は46%だが、実際に国民が使っている行政サービスのコストは収入の55%超に相当する」という事実は、現役世代が将来さらに重い負担を課される予兆でもある。
「日本の国民負担率は高い」と言っても、国際的に見てどのレベルなのかを理解することが重要だ。福祉大国と言われる北欧と比較すべきか、それとも自由主義経済のアメリカと比較すべきか——その基準によって評価は大きく変わる。
OECDのデータ(2022年度)を基に主要国を比較すると、以下のようになる。
| 国 | 国民負担率 | 特徴・現役世代への給付 |
|---|---|---|
| フランス | 68.1% | 高負担だが大学無償・充実した家族給付・失業手当が現役世代にも還元 |
| スウェーデン | 58.5% | 高負担・高福祉。育児休業・医療・教育が実質無償で現役世代の可処分所得を補完 |
| ドイツ | 55.9% | 大学授業料実質無償・手厚い育児支援・失業給付で現役世代の負担感を軽減 |
| イギリス | 49.7% | NHS(国民保健サービス)で医療費ほぼ無償。現役世代の医療負担は実質ゼロ |
| 日本 | 48.4% | 高負担なのに給付は老人向け中心。大学有償・育児支援薄・失業給付も限定的 |
| アメリカ | 36.4% | 低負担・低福祉。医療費は高いが自己負担が基本。国民負担率は低い。 |
※財務省・OECD資料参照。各国の制度比較のため概算値。
国際比較で最も重要な点はここだ。日本の国民負担率48.4%はイギリス(49.7%)に肉薄する水準だ。しかしイギリスでは医療費がほぼ無料のNHSが機能し、現役世代の医療コストは実質ゼロに近い。フランスやドイツは日本より高い負担率だが、大学無償・充実した育児支援・手厚い失業給付という形で現役世代・子育て世代への給付が手厚い。
日本の場合はどうか。社会保障給付費140兆円の約70〜75%が高齢者向けに使われている。現役世代・子育て世代への還元は相対的に薄い。つまり日本は「北欧並みの負担率でありながら、給付の恩恵は主に高齢者が受け取り、現役世代への還元が極めて少ない」という最悪のゾーンに突入している。
「高負担なら高福祉を受けられる」という欧州の論理は、日本では成立しない。高負担なのに現役世代への給付は三流——これが日本の国民負担率問題の本質だ。
国民負担率が24.3%から46.2%へ——この22ポイントの増加を引き起こした構造的要因を3つに整理する。
① 社会保険料の段階的引き上げ(最大の要因)
② 消費税の導入・引き上げ(1989年3%・1997年5%・2014年8%・2019年10%)
③ 少子高齢化による「分母の縮小」——国民所得が伸びない中で社会保障費が拡大
1970年から現在にかけて、社会保険料負担率(国民所得比)は約7%から約18%超へと約11ポイント増加した。これは国民負担率全体の増加22ポイントの約半分を占める最大の要因だ。厚生年金保険料率の引き上げ、医療保険の自己負担率引き上げに伴う保険料増、介護保険制度の創設と保険料率の上昇——これらが積み重なった結果だ。
消費税は1989年に3%で導入され、1997年に5%、2014年に8%、2019年に10%へと引き上げられた。累計で国民負担率を5〜6ポイント程度押し上げた計算だ。消費税の引き上げは政治的に目立ち、選挙のたびに大きな争点になる。しかし社会保険料の増加は同期間でそれを上回る規模で進んでいながら、政治的には消費税ほどには争点化されてこなかった。
国民負担率は「国民所得分の税+社会保険料」で計算される。社会保障費の絶対額が増え続ける一方で、少子化による労働人口の減少で国民所得の伸びが鈍化すると、分子(負担額)が増えて分母(国民所得)が伸びないため、比率(国民負担率)が上昇する。日本の場合、1990年代以降の低成長・デフレ期に国民所得がほとんど増えないまま社会保障費だけが膨らんだため、国民負担率が急速に上昇した。
国民負担率の問題は高所得会社員だけの話ではない。「106万円の壁」「130万円の壁」として知られる扶養控除・社会保険料の問題も、その本質は社会保険料制度の設計にある。
年収130万円を超えると夫の社会保険の扶養から外れ、自ら社会保険に加入しなければならない。その社会保険料は年間20〜25万円規模になるため、年収130万円を少し超えただけでは手取りが減る「逆転現象」が起きる。社会保険料制度の設計が、働きたい人の就業を阻害しているのだ。これは国民負担率の問題が、マクロの数字だけでなく個人の就労行動にまで影響していることを示す。
国民負担率46%という数字は、制度として存在する以上、普通に会社員として生きている限り逃れることは難しい。しかし合法的な範囲で負担を最小化する方法は存在する。
① iDeCo(個人型確定拠出年金)の最大活用:掛金が全額所得控除。所得税・住民税を下げることで実質手取りを増やす。社会保険料は下がらないが税後収入を増やせる。
② NISA(少額投資非課税制度)の活用:投資利益が非課税になるため、資産形成における実質的な税負担を下げられる。
③ フリーランス・個人事業主への移行:国民健康保険・国民年金への切り替えで、所得をコントロールすれば社会保険料を圧縮できる。ただし厚生年金より将来の年金が下がるトレードオフあり。
④ マイクロ法人の設立:個人事業主の事業収入と法人の役員報酬を分割し、社会保険料の計算基準を最適化する高度な節税手法。
⑤ ふるさと納税の活用:実質2,000円で返礼品をもらいながら住民税を削減できる。東京23区民には区財政へのダメージという問題点もあるが個人の実質手取りは増える。
「稼いでも半分近く持っていかれる」現実に対して、怒りながら諦めるのか、怒りながら合法的に逃げるのか——少なくとも後者の選択肢は存在する。国民負担率46%が当たり前だと思い込むことが、最も危険な思考停止だ。
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